産地 埼玉県の最西部、秩父地方で生産される秩父茶。自然豊かな山々に囲まれたこの地方では、盆地ならではの昼夜や夏冬の寒暖の差があります。特に冬は厳しい寒さに見舞われ、冬には10cm以上の積雪が観測されることもしばしばあります。 歴史 秩父茶は狭山茶が源流とされています。狭山茶は約400年前に茶が伝わり、200年前の江戸時代に広く普及していきました。具体的に何年前に秩父地方に伝わったかは定かではありませんが、それが西の秩父地方にも伝わり、現在の秩父茶として親しまれているのです。 また現在では銘茶としては狭山茶に統一されています。 茶葉 冬は厳しい寒さに見舞われるため、冬の葉の生長が非常に遅いのが特徴です。寒さを凌ぐために葉が肉厚になりやすく、甘みが強く深い香りのお茶となっています。 品種は「やぶきた」「さやまかおり」が主に使われています。
関東地方
【茨城県のお茶】奥久慈茶(おくくじちゃ)とは
茨城県最大の北部に位置する大子町(だいごまち)で生産されている奥久慈茶(おくくじちゃ)。昔ながらの手揉み製法で仕上げられたお茶です。 産地 茨城県の北部の山間部の町、大子町の山沿いで栽培されている奥久慈茶。栃木県の黒羽茶と並んで以前はお茶の北限と呼ばれる、栽培の最北端に位置していました。現在でも太平洋側での北限として知られています。関東平野からやや外れた山間部ということもあり、この地域は冬の北風が冷たく、それでいて雨が多いという茶の栽培にとってやや厳しい土地です。そんな大量生産が難しい土地だからこそ、量より質を重視して丁寧に育てられています。 奥久慈茶の茶摘み時期は一般的な時期よりも遅く、5月中旬から6月中旬までの間に行われるため、新茶の流通は遅いのが特徴です。 歴史 この土地で作られる奥久慈茶の歴史は今から約400年前までさかのぼります。京都の宇治から伝わったお茶の栽培は、江戸時代に広く普及していきました。当時は環境の悪さから、他の有名な産地のものに比べると品質が悪いものが多かったのですが、品種改良などもあり、明治から昭和にかけて高品質なお茶が生産されるようになりました。 茶葉 この地域は先に述べたように、茶の大量生産には向いていない土地です。茶葉の生育が他の地域に比べて非常に遅いこともあり、ほとんどの奥久慈茶では年に1度しか茶摘みが行なわれず、1番茶しか流通しません。そのため高級煎茶として世に出回っています。 製茶され茶葉は針や糸のように細く、艶のある仕上がりです。お茶は、北の産地ならではの深いコクと高い香りがあります。 品種はほとんどが「やぶきた」です。
【茨城県のお茶】猿島茶(さしまちゃ)とは
茨城県最大の生産量を誇る猿島茶(さしまちゃ)。肉厚な茶葉を深蒸し製法でまろやかさにしているお茶です。 産地 県内南西部の猿島郡境町や坂東市を中心に茶の栽培が行なわれており、茨城県で最も収穫量の多いお茶の産地です。この地方では、茶の栽培から製茶、販売に至るまで一貫して同じ生産者さんでされていることが多いのが特徴です。自分たちで栽培した茶を自分たちの感覚で製茶し、だれよりもその茶葉を知っていいる人たちが販売しているため、各お茶屋さんごとに「こだわり」が出て特徴が出やすいです。消費者にとってもお店の人に細かく聞きやすいのがいいですね。 歴史 この土地で作られる猿島茶の歴史は江戸時代の初期までさかのぼります。当時はお茶の生産地としては寒く、品質が悪いものばかりでしたが、京都から伝わった品種改良などを経て、高品質なお茶が採れるようになりました。江戸で庶民がお茶を楽しめるようになり、関東圏のこの地域でお茶の栽培が普及していきました。また、お茶は米などの代わりに年貢(税金)として納めることもできました。 また猿島茶はお茶の輸出としても歴史があります。江戸時代に日米修好通商条約(1859)が結ばれてから、商人がアメリカに猿島茶を積極的に輸出していったのです。 茶葉 太平洋から離れた関東平野の中央にあるこの地域では、火山灰の土壌が特徴です。この火山灰が茶の木の栄養をとなり、芽の成長を促しています。また、この地域は冬には冷たい北風にさらされます。その寒さに耐えるために茶葉は肉厚になり、結果的に猿島茶は濃厚な香りを出すお茶になるのです。濃厚な香りをまろやかに仕上げるために深蒸し製法が主流になっています。 品種は「やぶきた」が中心ですが、「さえみどり」や「かなやみどり」といった品種もよく使われ、ブレンドされているものもあります。
【栃木県のお茶】黒羽茶(くろばねちゃ)とは
栃木県の北東部に位置する大田原市の黒羽茶(くろばねちゃ)。山間地ならではの非常にまろやかなお茶です。 産地 大田原市は松尾芭蕉「奥の細道」で、松尾芭蕉とその弟子が最も滞在した土地として記録されています。市内には「黒羽芭蕉の館」があり松尾芭蕉に関する様々な文献が所蔵されています。もしかしたらこの地方のお茶を好んで飲んでいたかもしれませんね。 歴史 この土地で作られる黒羽茶の歴史は江戸時代までさかのぼります。現在の日本に存在する茶畑の中でも、かなり北の方に位置しており、当時は最北に近い環境だったのではないかとまで言われています。新茶の時期も遅く、5月下旬ごろです。 東京に近いことからも、一時期は大きなお茶の産地だったのですが、現在では製茶工場は須藤製茶工場の1軒のみ。最ブランド化や若手農家の育成が急がれているお茶です。 茶葉 涼しい山岳地帯で育てられたお茶のため、比較的味や香りが濃いのが特徴です。飲んでみるとまろやかさが強いお茶になっています。 また品種は「やぶきた」が中心です。