三重県全域で生産されている伊勢茶(いせちゃ)。日本で3本指に入る茶の産地として知られる三重県で、各地域ごとに様々な特色のお茶が生産されており、それらを総称して伊勢茶と呼ばれている。特に県北部にて被覆栽培で生産される「かぶせ茶」は生産量で日本一を誇る。一方で南部では「煎茶」や「深蒸し煎茶」が一般的で、全国の品評会でもよく選ばれるほど品質に定評がある。比較的温暖で茶の栽培に適した地域であり、南北に長い県であるため一番茶の収穫時期(茶の旬)には開きがある。
製法・味
伊勢茶は大きく北部の「かぶせ茶」、南部の「煎茶・深蒸し煎茶」に分かれます。
北部-かぶせ茶-
北部の「かぶせ茶」は、収穫から約1週間前に黒い寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれる布をチャノキ全体に被せます。それにより日光を遮り、栄養分を茶葉に凝縮するのです。
この製法は被覆栽培(ひふくさいばい)と呼ばれます。同じ被覆栽培で作られるお茶には玉露や抹茶の原料になる碾茶がありますが、かぶせ茶はこれらよりも日光を遮る時間が短いことが特徴です。
かぶせ茶の味は、煎茶に比べて甘味や旨味が強く、渋味が弱いことが特徴で上品な味わいを楽しむことが出来ます。
南部-煎茶・深蒸し煎茶-
南部で生産される「煎茶・深蒸し煎茶」は他県で生産されているものと生産工程に大きな違いはありません。ただし、霧が発生しやすいこの土地では、チャノキが特に朝の日光を浴びる時間が短くなり、天然の被覆栽培のような状態で育ちます。そのため、香り高い品質となり全国の品評会では何度も賞を取るほどのものに仕上がっているのです。
ちなみに三重県中部にかつて存在した城は「霧山城」と名付けられており、それほど霧が多い地域であったことが伺えます。
産地
お茶の生産地として日本の3本指に入る三重県は全域でお茶の生産されており、それらを総称して伊勢茶と呼びます。
県の大半の平均気温が約15℃と比較的温暖です。また山間地も多いため昼夜の温度差も大きく、かなりチャノキの育成に適した土地です。また前述の通り朝霧が発生しやすいこともあり、高い品質のお茶が取れやすい地域と言えます。
歴史
伊勢茶の始まりは約1100年前の平安時代。中国の唐に渡っていた空海や最澄がチャノキの種を持ち帰り、日本で茶が始まったのですが、しばらくしてその種を三重県のお寺に植えられたのがルーツとされています。
茶の栽培が広まったのは約700年前の室町時代以降。年貢(当時の税金)として茶が収められ始め、徐々に普及していきました。明治時代にはアメリカに向け茶の輸出も積極的に行われています。また戦後にはさらに生産量が増えていき現在に至ります。
茶の有名な産地である静岡県や鹿児島県に比べて価格が安いこともあり、近年ではスイーツなどに用いる加工用の茶の出荷が多く、全国でもトップのシェアを誇っています。
品種
県内ほぼ全域で「やぶきた」品種が大部分を占めています。
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