日本の煎茶は、世界的にも人気のある緑茶の1つです。
煎茶は他の飲み物と比較しても軽い口当たりで、ホットはもちろんアイス(水出し)としても親しまれています。中国を含め、日本以外のいくつかの国でも煎茶は作られていますが、殆どの外国の煎茶は日本のものよりも味や色合い、また香りが薄いことが特徴です。
この記事では日本の煎茶がどのように作られているか、煎茶の種類は何があるのか、煎茶を飲むメリットは何か、など煎茶についてもっと知りたい方向けに解説していきます。
日本の煎茶について
煎茶とは?
煎茶は日本で最も親しまれている緑茶でチャノキの葉っぱから作られている飲み物です。
日本の茶農家で生産されているお茶の約60%が煎茶として仕上げられており、生産された煎茶は、インドや中国のように輸出に使われることは少なく、ほとんどは国内で消費されています。
また日本のチャノキの多くは有機栽培ではありませんが、世界的にも厳しい日本の農薬基準のもとで管理されています。
煎茶の味は?
煎茶は爽やかな緑の風味と旨味・甘み・渋味・苦味のバランスの取れた味わいが特徴です。
中国で作られる緑茶の多くはチャノキの葉っぱを「火にかけて(炒って)」仕上げられますが、日本で作られるほぼすべての煎茶は「蒸して」仕上げられています。そのため、中国茶によく見られるような香ばしい甘い香りはなく、より新鮮な緑の香りが残っているのが特徴です。
お茶の色は透明感のある明るい緑や黄色、また濃い緑色など煎茶の種類・淹れ方によって異なります。
煎茶を飲むメリットは?
緑茶の体への効果・影響というのは現在でも様々な国の大学や機関で研究されており、解明されていないことが多く残っていると考えられています。多くの緑茶のメリットは含まれている抗酸化物質から来るとされており、特にカテキンの1種であるEGCg(エピガロカテキンガレート)という物質に由来しています。そしてそのEGCgを多く含む緑茶の1つが「煎茶」なのです。また海外の煎茶と比較して、日本の煎茶は平均的にカテキン類が多いことが報告されています。
現在報告されている緑茶を飲むメリット(健康効果)は以下の通りです。
- 抗がん作用:お茶をよく飲む人は特に胃がんを発症する割合が少ないです
- ダイエットを補助する:カテキン類が体内の糖の吸収を抑制します
- アンチエイジング:様々なビタミンが含まれ、壊れやすいビタミンCはカテキンの影響で壊れにくくなっています
- 高血圧予防:カテキン類は血圧を上昇させる体内の原因物質の1つを抑える作用があります
- 抗アレルギー作用:一部品種の緑茶はアレルギー症状を抑えるメチル化カテキンを多く含みます
- 悪玉コレステロール値を下げる:EGCgがLDLコレステロールの酸化を抑えます
- 食中毒予防:食事と一緒に摂ることで、食中毒の原因となる一部の菌の発育阻止をする効果があります
- 風邪予防:サポニンという物質が抗菌・抗ウイルス作用があり、特にお茶でうがいをすると効果的です
- 虫歯の予防:カテキン類が虫歯菌の繁殖を抑えます
※前述の通りまだ研究が進んでいる最中のため、後にこれらが否定される可能性もありますし、まだまだメリットが増えていく可能性もあります。
煎茶の作られ方は?
煎茶が出来るまでは大きく「荒茶まで」と「仕上げ」の2つの工程に分けられます。荒茶までは「乾燥」、仕上げは「火入れ(焙煎)」が主な目的です。
荒茶まで
- 蒸し:葉の青臭さを消して柔らかくします(酵素を失活させます)
- 葉振るい:熱風を使って葉の水分を均一に飛ばします
- 回転揉み:茎などに残った水分を茶葉全体で均一にします
- 揉み切り:葉を細かくしていきます
- 転繰揉み(でんぐりもみ):揉みながら葉の形を針状に整えていきます
- 乾燥:全体を乾燥させ水分含有量を5%程度にしたら完成です
仕上げ
- 乾燥:荒茶をさらに乾燥します
- 選別・整形:粉や茎を分別していきます
- 火入れ:分けた部材ごとに火入れ(焙煎)していき香りを引き立たせます
- 合組(ごうぐみ):火入れしたそれぞれの部材を調合し、お茶の完成です
煎茶にはどんな種類があるか?
日本の煎茶は、世界で最も種類が多いです。色は淡黄色から深い緑色まで、香りは弱いものから強いものまで、味は渋味が強いものから甘みが強いものまでと非常に様々です。
煎茶は主に以下の違いで種類が分けられます
- 産地
- 収穫時期
- 処理方法(蒸し時間)
- チャノキの品種
- ブレンディング
○産地
産地によって気象条件や土壌が変わるため、同じ品種の木を使って煎茶を作っても産地ごとに違う味になります。
多くの煎茶の名前はその産地に合った銘柄が付けられています。
→都道府県ごとの銘柄はこちらを参照ください(全国茶生産団体連合会)
収穫年によって差はありますが、日本で煎茶が主に生産されているのは、静岡、鹿児島、宮崎県です。次いで福岡、三重、埼玉などの地域で煎茶が多く生産されています。
○収穫時期
煎茶は主に春、夏、秋に収穫されます。
1年で最初に収穫(4月前後)された煎茶は『新茶(一番茶)』と呼ばれ、とても人気があります。2番目以降に収穫(6月~9月)されたものはそれぞれ『二番茶』『三番茶』、、、と表現しますが、新茶よりも味が劣るため、これらは通常商品名やパッケージには記載していないことが多いです。その分安く販売されています。
一般的に収穫が早いお茶(一番茶)のほうが苦味成分であるカテキンが少なく、甘み成分であるアミノ酸類が豊富に含まれるため、甘いお茶に仕上がります。二番茶以降は逆に比較的苦味・渋味が強いお茶になります。
○処理方法(蒸し時間)
同じ産地で取れたお茶でも処理の方法が違えば別の味になります。中でも一番わかり易いのは蒸し時間です。煎茶ではこの蒸し時間が短いものから「浅蒸し」「中蒸し(普通蒸し)」「深蒸し」と区別されます。
- 浅蒸し:薄い黄色、青さのあるさっぱりした香り、渋味や旨味が強い味
- 深蒸し:濃い緑色、香ばしさの強い香り、甘みやコクの強い味
- 中蒸し:浅蒸しと深蒸しの中間
一般的には生産地が山間部のお茶ほど浅蒸しが多く、海沿いや平地のお茶ほど深蒸しが多いです。これは山間部のお茶のほうが気象条件的に葉自体の香りが強くなりやすく、香りが付きにくい浅蒸しでも十分強い香りに仕上がることが主な理由です。
○品種名
煎茶を作るのために使われるチャノキの品種によっても煎茶の種類が変わります。
現在日本では100種類以上の品種が生産されていますが、生産面積の約7割が「やぶきた」という品種です。この品種は明治時代に誕生し、害虫などにも強く大量生産に向いていることから、全国で広く普及していきました。現在でもよく使われていますが、地域ごとの特色をより出すために、近年それぞれの地方で新しい品種の普及が進んでいます。
○ブレンディング
最終的に製茶所で仕上げられたお茶は、いくつかの農家の茶葉をブレンドされて商品化されることがよくあります。同じ工程で作られたお茶でもこの混ぜる割合などによっても種類や商品名が変わります。
これにはいくつかの理由がありますが、その一つは量を確保するためです。小さな農家で収穫された少量の茶葉を大量生産の製茶所で仕上げるには効率が悪いため、いくつかの農家の茶葉を合わせて製茶されるのです。
煎茶の淹れ方
煎茶は淹れ方によって、味や香りが大きく変わります。とてもさわやかなお茶からとても苦いお茶まで淹れる人のセンスが試されます。個人差があるため人によって「この淹れ方が一番美味しい」というのは変わります。また煎茶の種類によっても淹れる際の量や時間が少し変わります。ここでは一般的に美味しいとされている煎茶の淹れ方についてご紹介します。
用意するもの
- 煎茶の茶葉
- さじ(スプーン)
- 湯呑
- お湯
淹れ方
- 沸騰したお湯を何も入っていない急須に入れます(1人あたり100ml)
- 急須から湯呑にお湯を移します
- さじを使って急須に煎茶を入れます(1人あたり2~3g)
- 湯呑に入ったお湯を急須に注ぎます(この時理想は70℃)
- 1分待ちます
- 急須から湯呑に煎茶を少しずつ注いで完成です
解説
まず、煎茶に適したお湯の温度は「約70℃」と言われています。この温度は、茶葉に含まれるカテキンやカフェインなどの味を作る成分が、ちょうど美味しい比率で溶け出す温度なのです。
最初から70℃のお湯を作って淹れても良いのですが、急須や湯呑が冷たいとお湯の温度が下がってしまいます。そのため沸騰したお湯を一度急須や湯呑に移すのです。そうすることでお湯の温度を下げつつ、容器の温度を上げることが出来ます。
茶葉を急須に入れ、お湯を注いだあとで「1分間」待つもの、美味しい比率で成分が溶け出す丁度いい時間だと言われているためです。
最後に湯呑に入れる際に、少しずつ注ぐのは味を均一にするためです。急須から出るお茶の最初と最後では濃さが全然違います。特に2杯以上を作る際には、それぞれで違う濃さにしないために、少しずつ分けて注いでいくのが正しい淹れ方です。ちなみに最後の1滴までおいしく飲めるので、しっかり注ぎきりましょう。
参照:
[1] http://www.maff.go.jp/e/policies/agri/attach/pdf/index-1.pdf
[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6100455/
[3] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1806661
[4] https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/1996/83/1996_83_21/_article/-char/en
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