『抹茶』は日本で生まれたお茶の1種で、高級な嗜好品として親しまれています。
抹茶は1,600年頃に千利休により大成され、現在でも日本のみならず、北米を中心に世界で広く親しまれています。また抹茶は茶道で用いられていることでも有名です。茶道はお客に茶を振る舞う儀式の1つで、現在では様々な流派が存在します。
抹茶は日本で生まれた他のお茶とと比べて、製造方法や淹れ方やが大きく異ります。抹茶の原料(粉末にする前の葉)は「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれ、他のお茶よりも非常に手間暇かけて加工されます。
また抹茶は、上級品(高価)になるほど鮮やかな緑色をしており、苦味・渋味が少なく、旨味(甘み)が濃厚です。
この記事では日本の抹茶がどのように作られているか、抹茶を飲むメリットは何か、など抹茶についてもっと知りたい方向けに解説していきます。
日本の抹茶について
抹茶とは?
抹茶は日本で完成されたお茶の1つで、他のお茶と同じくチャノキの葉っぱから作られている飲み物です。お茶の分類上では抹茶は「緑茶」の1種とされています。
生産量は日本の茶農家で生産されているお茶全体の約5%で非常に少ないです。その理由として抹茶用の品種のチャノキを育てる必要があること、製造に手間がかかり人手や機械が足りないこと、など様々な要因が挙げられます。しかし近年、日本を含めて世界でも抹茶の需要が高まっており、その生産量は徐々に増えてきています。
また日本のチャノキの多くは有機栽培ではありませんが、世界的にも厳しい日本の農薬基準のもとで管理されています。
抹茶の味は?成分は?
抹茶は鮮やかな緑色をしています。一般的に抹茶の味は苦味が強いとされていますが、高級なものほど旨味や甘味が強くなります。どの抹茶でもとてもまろやかで濃厚な味わいが楽しめます。
抹茶には煎茶などの他の緑茶に比べて、アミノ酸やカフェインが多く、カテキン類が少ないのが特徴です。
アミノ酸は甘味や旨味を感じる成分で、カフェインは苦味を感じる成分です。このどちらの成分も多いことから、抹茶は他のお茶よりも濃厚な味わいとなります。
実際には抹茶の色や味はその種類・淹れ方によって少し変わってきます。
抹茶を飲むメリットは?
緑茶の体への効果・影響というのは現在でも様々な国の大学や機関で研究されており、解明されていないことが多く残っていると考えられています。抹茶を含む多くの緑茶のメリットは含まれている抗酸化物質から来るとされており、特にカテキンの1種であるEGCg(エピガロカテキンガレート)という物質に由来しています。そして抹茶には(煎茶ほどではありませんが)EGCgを多く含みます。
現在報告されている緑茶を飲むメリット(健康効果)は以下の通りです。
- 抗がん作用:お茶をよく飲む人は特に胃がんを発症する割合が少ないです
- ダイエットを補助する:カテキン類が体内の糖の吸収を抑制します
- アンチエイジング:様々なビタミンが含まれ、壊れやすいビタミンCはカテキンの影響で壊れにくくなっています
- 高血圧予防:カテキン類は血圧を上昇させる体内の原因物質の1つを抑える作用があります
- 抗アレルギー作用:一部品種の緑茶はアレルギー症状を抑えるメチル化カテキンを多く含みます
- 悪玉コレステロール値を下げる:EGCgがLDLコレステロールの酸化を抑えます
- 食中毒予防:食事と一緒に摂ることで、食中毒の原因となる一部の菌の発育阻止をする効果があります
- 風邪予防:サポニンという物質が抗菌・抗ウイルス作用があり、特にお茶でうがいをすると効果的です
- 虫歯の予防:カテキン類が虫歯菌の繁殖を抑えます
※前述の通りまだ研究が進んでいる最中のため、後にこれらが否定される可能性もありますし、まだまだメリットが増えていく可能性もあります。
また、抹茶には他のお茶に比べてカフェインとテアニン(アミノ酸の1種)が多いことが特徴です。そのため以下のような利点もあります。
- リラックス効果:アミノ酸の1種であるテアニンには気持ちをゆったりさせる効果があります
- 眠気覚まし:覚醒作用のあるカフェインを豊富に含んでいます
この2つは反対の効果のように感じるかも知れませんが、実際には両方働きます。抹茶にはカフェインが多いのにコーヒーに比べて興奮作用が少ないのはテアニンのためなのです。
抹茶の作られ方は?
お茶の製造工程はチャノキの葉を育てる工程と加工する工程の2種類がありますが、抹茶の作り方は他の緑茶とどちらも異なります。
育て方
抹茶は高級緑茶の1つである玉露と同じ様に、収穫する約20日前(新芽が伸び始めたら)の葉に黒い布を覆います。これを被覆栽培(ひふくさいばい)と言います。これを行うことで葉への直射日光を遮り、保温することができるのです。そうすることによって、光合成が抑えられ、葉に旨味や甘味成分を凝縮することが出来ます。また、被覆栽培で葉にクロロフィルが増え、緑色が濃くなります。
被覆栽培の方法もいくつか種類があります。直接布を覆い被せたり、屋根のように支柱を使う方法などがあります。以下は抹茶の生産で有名な京都の茶の生産風景です。
(Source:Googleストリートビュー)
摘み取った茶葉は、加工されます。加工過程で他の緑茶と大きく違う点は、葉を揉まずに乾燥させるところです。
加工方法
- ふるい分け:切断された葉などの必要のないものを取り除きます
- 蒸し:高温の蒸気を当てて蒸します。蒸し時間は約15秒で非常に短いです
- 乾燥:専用の乾燥機(碾茶炉)で葉の水分をゆっくりと飛ばし、くっついた葉をバラバラにしていきます
- 仕立て(シタテ):茎や葉脈などを取り除き、大きさを約5mmに切り揃えていきます
- 熟成:一定期間熟成され、需要に応じて次の工程に進みます
- 石臼挽き:葉を石臼で挽いて粉状にしていきます。一定の速さで少しずつ行います
- ふるい:最後に細かい粉だけをふるい分けて完成です
他のお茶に比べて、抹茶加工は温度や湿度を厳密に管理する必要があります。さらに細かく丁寧な作業が必要です。実際、高級な抹茶は「6.石臼引き」で1時間に40gしか製造できません。
抹茶にはどんな種類があるの?
玉露は煎茶よりも濃く、甘い味わいが特徴です。しかし細かい色や味わいは非常に様々な種類があります。
煎茶と同じく玉露にも主に以下の違いで種類が分けられます
- 産地
- 加工工場
- チャノキの品種
- ブレンディング
○産地
産地によって気象条件や土壌が変わるため、同じ品種の木を使って抹茶を作っても産地ごとに違う味になります。
収穫年によって差はありますが、日本で抹茶が生産されているのは、京都府、鹿児島県、静岡県、愛知県などです。煎茶で有名な静岡県や鹿児島県よりも京都のほうが抹茶の生産量は多くなります。また、鹿児島県はケーキや飲み物で使う「加工用抹茶」を多く生産しており、そのまま飲むための抹茶はそれほど多くはありません。
ちなみに「加工用抹茶」とは、製造の工程を簡略化することで大量生産して出来たものです。熟成の期間がなかったり、2番茶(1年で2回目に収穫されたお茶)を使っていたり、石臼引きが荒かったりします。しかし価格が安いことから日本以外ではそのまま飲まれることもあります。
有名な抹茶の銘柄は以下のようなものがあります。
- 宇治抹茶(京都)
- 西尾の抹茶(愛知)
○加工工場
抹茶の加工は非常に繊細な作業と管理が必要であり、製造所によって品質に差が出てきます。
加工所内の温度や湿度の管理方法はもちろんですが、使用している石臼の種類も加工所によって違います。最終的に粉の大きさ(粒度)やそのバラツキに違いが生まれます。
○品種名
抹茶を作るのために使われるチャノキの品種によってもその種類が変わります。
日本では生産面積の約7割が「やぶきた」という品種であり、ほとんどが煎茶用に生産されています。しかし抹茶用のチャノキは「アサヒ」や「さみどり」、「てんみょう」など様々な種類があり、それによって特徴も様々です。
○ブレンディング
最終的に製茶所で仕上げられたお茶は、いくつかの農家の茶葉をブレンドされて商品化されることがよくあります。同じ工程で作られたお茶でもこの混ぜる割合などによっても種類や商品名が変わります。
これにはいくつかの理由がありますが、その一つは量を確保するためです。小さな農家で収穫された少量の茶葉を大量生産の製茶所で仕上げるには効率が悪いため、いくつかの農家の茶葉を合わせて製茶されるのです。また複数を混ぜることで1つ1つの品質のばらつきを抑える効果もあります。
また、抹茶は高級であるため「抹茶入り」の煎茶として販売されていることも多くあります。これらに使われている抹茶はやや品質が劣るものを使用している場合があるため注意が必要です。
抹茶の淹れ方
抹茶は他のお茶と異なり、粉を水で溶かし、粉ごと飲みます。そのため抹茶の淹れ方や必要な道具は他のお茶と大きく異なります。
個人差があるため人によって「この淹れ方が一番美味しい」というのは変わります。また茶道の流派によっても淹れ方が異なります。ここでは一般的に美味しいとされている抹茶の淹れ方についてご紹介します。
用意するもの
- 抹茶
- 茶せん
- 茶こし(ふるい)
- お湯
- 茶碗(湯呑)
淹れ方
- 沸騰したお湯を何も入っていない茶碗に入れて茶碗を温めます(1人あたり70ml)
- 茶碗のお湯を別の容器に移します
- 抹茶を茶こしで篩います
- 篩った抹茶を茶碗に入れます(1人あたり2g)
- 約70℃まで下がったお湯を少量茶碗に注ぎます
- 茶せんを使って粉を溶かすように全体をゆっくり混ぜます
- 残りのお湯を茶碗に注ぎます
- 茶せんを使って手首を前後に小刻みに動かし、大きな泡を作ります
- 大きな泡を茶せんで潰して、表面を整えていきます
- 泡が細かいほど口当たりがなめらかでおいしく仕上がります
解説
まず、抹茶に適したお湯の温度は「約70℃」と言われています。熱いお湯で淹れてしまうと、苦味成分であるカフェインなどが多く溶け出してしまい、非常に苦味が強いお茶になってしまいます。
抹茶は他のお茶と違い、泡立てることが淹れ方の特徴です。泡立てて、お茶の中に空気を取り込むことで、口当たりがよくまろやかな味わいになるのです。逆に泡立てを行わないと粉っぽさが残ってしまいます。しかし泡を立てないと、強い香りを感じることも出来ます。流派によっては泡立てを殆ど行わない淹れ方もあります。どちらが美味しいか、一度両方で飲んでみましょう。
参照:
[1] http://www.mac.or.jp/mail/151001/03.shtml
[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6100455/
[3] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1806661
[4] https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/1996/83/1996_83_21/_article/-char/en
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