世界には7000以上の言語があると言われています(普段話されているのは20ほどですが)。そんなに種類がある言語でも、不思議なことにほとんど同じような呼び方で呼ばれているものがあります。
例えば「寿司(Sushi)」や「着物(Kimono)」なんかがそうです。これは、その国独自の文化や食べ物など、モノと言葉が同時に輸出されていくからです。実は今回の「茶」もその一つです。
しかし「茶」は、ある理由で2つの言葉が同時に広がることになります。
今回は、世界の「茶」の呼び方について、解説しながら世界地図で分布分けをしていきます。
世界の「茶」の呼び方はたった『2通り』だけ
お茶は遥か昔に中国で生まれました。その後飲み物としてのお茶が世界に広まり、同時に「茶」という言葉も普及していったのです。
しかしその発症の地の中国に呼び方が2つあったのです。
チャ(cha)
1つは日本でもおなじみの「チャ(cha)」という言葉です。
これは香港などがある広東地方の言葉(広東語)の発音に由来します。「チャ」という言葉は主に陸路を伝って世界へ広がっていきました。特にシルクロードが最盛期だった頃、中東までチャという言葉が輸出されていきました。ロシアや日本も同じようにこの「チャ」という言葉が広まっています。
テ(te)
もう1つは「テ(te)」という言葉です。
英語「tea」もコレが由来になっています。これは広東地方の東に位置する福建地方の言葉(福建語)の発音です。この「テ」という言葉は主に海路を伝って世界へ広がりました。ヨーロッパ諸国がインドを目指した大航海時代以降は、この言葉がヨーロッパに伝わり、英語圏やスペイン語圏では「te」が由来の言葉に変わっていったのです。
「チャ(cha)」と「テ(te)」の世界の分布図
赤:「テ(te)」 緑:「チャ(cha)」 黄:混在 として世界の各国を色分けてみました。
複数の言語を使っている国は、分かる範囲で主に使われている言語で考えています。判別が出来なかった一部の国は白いままにしています。比較的小さい国では塗り間違いがあるかもしれませんが、大きく逸れてはいないかと思います。
海上輸出で伝わった「テ(te)」の英語、スペイン語、フランス語を公用語としている国が非常に多く、赤い国のほとんどがそのどれかに当たります。またマレー語を始め、東南アジアでも赤い色が目立ちますね。
反対に緑で塗った「チャ(cha)」は中東(アラビア語・ベンガル語)、ロシア(ロシア語)が目立ちますね。また、なぜかポルトガル語だけは西ヨーロッパの言語で唯一「チャ」が由来になっています。そのため、かつてポルトガルの領土だったブラジルやアフリカの一部が緑になっています。
中国やインドでは両方の言葉が混在しているため黄色で色塗りしています。しかし、人口比率的に言えば圧倒的に緑の「チャ」になるでしょう。
最後に東ヨーロッパで色塗りしていない白色の国がいくつかありますね。大きな国で言えば「ポーランド(ポーランド語)」や「ベラルーシ(ベラルーシ語)」です。このあたりの言語では茶は「ハーブ」が由来の言葉になっています。もしかしたら、中国から伝わった茶よりも、ハーブティーのほうが早く馴染んでいたのかもしれませんね。
人口比率
最後に母語にしている人口でざっくり比率を計算しました。
ざっくりですが、約65%がチャが由来の言葉を使っていました。やはり中国やインドの大部分がチャ由来の言葉というのが大きかったです。地図で見るよりもチャに偏っていますね。
さいごに
茶は世界で大きく2種類の呼び方で発音されています。しかし今日ではお茶は世界中で親しまれ、それぞれの国で独自のアレンジがされています。同じ言葉でも中身が大きく違うお茶。そのお茶と国の歴史を一緒に調べていくともっとお茶のことが好きになるかもしれませんね。
地図制作:白地図ぬりぬり
世界の母語一覧:文部科学省(世界の母語人口)