お茶には緑茶、烏龍茶、紅茶などがありますが、実はこれらのお茶の葉は全て同じです。加工方法の違いによって、味や風味が変わります。日本で1番よく飲まれるのが緑茶です。お茶の葉を摘み取ってすぐに加熱し、発酵しないようにして作ったものです。その緑茶の中にも製茶の方法によって煎茶、玉露、番茶など様々な種類に分けられます。ここでは、緑茶の中でもあまり知られていないかぶせ茶、釜炒り玉緑茶、蒸し製玉緑茶についてご紹介します。
かぶせ茶
最初に紹介するのはかぶせ茶です。
かぶせ茶の作られ方
緑茶の中でも最も定番のお茶、煎茶は茶木の新芽を蒸して揉みながら乾燥させて作られます。
かぶせ茶も製茶方法は同じですが、茶葉を生育させる時に寒冷紗や藁で茶木を覆って、陽の光を当てずに新芽を育てる被覆栽培で作られます。遮光される期間は3〜14日程度です。玉露も同じく被覆栽培されますが、遮光される期間が20日前後と長いところが違います。
また、かぶせ茶は茶木を直接覆うのに対して、玉露は大きな遮光幕を茶園全体にかけるという被覆方法に違いもあります。
陽の光を遮って栽培すると、お茶の渋みを感じさせるカテキンが減り、甘みと旨味を感じさせるテアニンが多くなります。
かぶせ茶の価格
かぶせ茶の価格は産地や茶葉を摘むタイミングによって異なりますが、100g当たり500〜2,000円程度です。
かぶせ茶の主な産地
かぶせ茶の主な生産地は三重県です。農林水産省生産局平成28年度茶需給・流通状況調査委託事業 報告書・概要版によると、2015年のかぶせ茶の全国生産量は4160tで三重県が最も多く2,784tです。以下、奈良県と福岡県300t、京都府196t、静岡県185t、鹿児島県146t、佐賀県99t、熊本県67t、愛知県11tと続きます。
西日本の生産量が多く、関東ではあまり栽培されていないことがわかります。そして圧倒的に三重県の栽培量が多いようです。
参考資料・・・農林水産省生産局
かぶせ茶の成分
かぶせ茶に含まれる主な成分はテアニン、カテキン、カフェインです。
茶葉にはテアニンが含まれていますが、日光に当たるとテアニンはカテキンに変化します。かぶせ茶は被覆栽培で陽を遮っているので、煎茶に比べるとテアニンが多いという特徴があります。
テアニンはアミノ酸の一種です。お茶の甘みや旨味を引き出す成分です。リラックス効果があり、安眠やうつの改善、PTSDなど精神的な症状を改善させる効果があるとされています。
カテキン
カテキンは抗酸化作用、抗菌作用、体脂肪を燃焼させる作用、血糖値の上昇を防ぐ作用、がん細胞の増殖を抑制させる作用など様々な効能があるとされています。
カフェイン
カフェインは覚醒作用があり眠気を抑えたり集中力を高める効果があります。
かぶせ茶がおすすめなのはどんな人?
陽を当てないことで、お茶の旨味成分であるテアニンを多く含んでいます。テアニンはお茶の旨味と甘味を出す成分です。しかし、玉露より被覆される期間が短いため、煎茶と玉露の間のような味とよく例えられます。煎茶ほど渋くなく、玉露ほど甘みと香りが強くないので、煎茶と玉露の中間のような味わいです。
窯入り緑茶
次に窯入り緑茶です。
窯炒り玉緑茶の作られ方
日本の一般的な緑茶は、茶葉を発酵させないようにするため、茶葉を摘んだ後はすぐに蒸して酵素の活性を失わせます。釜炒り玉緑茶は、蒸すのではなく鉄製の釜で炒って加熱することで発酵させないようにするという九州に伝えられた中国の製茶法で作られています。
製茶の工程は煎茶と同じです。違うのは最後に茶葉の形を真っ直ぐに整える精揉という工程がなく、回転するドラムの中で乾燥させるため、勾玉のような丸みのある形状になっているところです。
釜で炒っていることや、ぐりっと丸い形をしていることから「カマグリ茶」とも呼ばれます。
釜炒り玉緑茶の価格
釜炒り玉露茶の価格は、産地や茶葉を摘むタイミングによっても異なりますが、100g当たり500〜2,000円程度です。
釜炒り玉緑茶の産地
釜炒り玉緑茶は、主に九州で生産されています。平成29年の釜炒り玉緑茶の全国生産量は242tで、宮崎県が最も多く94tです。以下、佐賀県89t、佐賀県40t、熊本県14t、長崎県4t、静岡県1tと続きます。
参考資料・・・・全国茶生産団体連合会
釜炒り玉緑茶の成分
釜炒り玉緑茶はカテキンとカフェインを多く含んでいます。
このあたりはかぶせ茶を含めて、他の緑茶と同じですね。
釜炒り玉緑茶がおすすめなのはどんな人?
釜炒り玉緑茶は炒っているので、普通の茶葉より色がくすんでいて濃く見えますが、お茶にすると透明感のある色になります。渋みが少なく、さっぱりとした味と豊かな香りが特徴です。
蒸し製玉緑茶
最後に蒸し製玉緑茶です。
蒸し製玉緑茶の作られ方
玉緑茶には蒸し製と釜炒りがあります。どちらも生産量の少ないお茶ですが、釜炒りに比べて効率よいため、現在では玉緑茶といえば蒸し製が一般的になっています。
蒸し製の玉緑茶は、釜炒りとは違い、摘んだ茶葉を蒸すことによって酵素の活性を失わせて発酵を止める製法です。
その後の工程は釜炒りと同じで、煎茶のような茶葉の形を整える精揉がなく、乾燥させるため勾玉のような形に仕上がります。
「ぐり茶」「ムシグリ」と呼ばれることもあります。
蒸し製玉緑茶の価格
蒸し製玉露茶の価格は、産地や茶葉を摘むタイミングによっても異なりますが、100g当たり500〜2,000円程度です。
蒸し製玉緑茶の産地
蒸し製玉緑茶は、主に九州で生産されています。平成29年の釜炒り玉緑茶の全国生産量は1911tで、長崎県が最も多く553tです。以下、佐賀県548t、熊本県391t、鹿児島県155t、静岡県144t、大分県60t、宮崎県59t、 島根県1tと続きます。
参考資料・・・全国茶生産団体連合会
蒸し製玉緑茶の成分
蒸し製玉緑茶はカテキンとカフェインを多く含んでいます。
他の2つと同じです。
蒸し製玉緑茶がおすすめなのはどんな人?
茶葉はしっかりと蒸すことで、まろやかになり深いコクが生まれます。蒸し製玉緑茶は、煎茶に比べまろやかで旨味があるのが特徴です。香りも爽やかなので緑茶の渋さが苦手という人におすすめです。